野村羊子Blog
 日々の思いや行動などを綴っていきたいと考えています。よろしくお願いします。

2009/04/19
09年4月19日 これからの公共事業

岡山県の西粟倉村の話を読んだ。
600人の地権者を説得し、村にある私有山林を10年間村に預け、村が収益を還元する。村の森林組合が都会から若者を雇い、全国から出資を募って大型伐採機械を導入する。都会の設計事務所や工務店と連携し、木材加工の会社も作るという。
まさに、私が思っていた新しい公共事業のあり方。それを実践するところが出てきた。これこそ、国が新しい経済対策として応援すべき事業だと思う。
山林も、ただ伐採だけではなく、山菜やキノコの栽培など、切った後にいろいろな事業を展開すればいい。あるいはどんぐりなどの木を植え、動物たちが里に降りずにすむ豊かな山を再生する方向も考えてほしい。ただ杉一色ではなく、多様な森をつくることは、それだけでCO2削減、地球温暖化に役立つ。植林事業などによって、CO2排出権を販売するという収益の上げ方も可能かもしれない。様々な可能性を秘めた事業だと思う。
人が来ることで村への経済波及効果もあるだろう。人が居着くまで苦労があるかもしれないが、是非チャレンジしてほしい。そして、全国の村に波及してほしい。

同様に、全国の山村で放置されている田んぼ=棚田も、村が借りて再興してほしい。実際の事業は田んぼ組合を作るか、JAが担うか、いろいろあっていいと思う。田んぼは、ダムを造るのに劣らない夏場の貯水池となる。無農薬栽培で、水路に炭などを沈めておけば水の浄化作用も見込める。水の確保は世界戦略の中で重要な課題だ。生物の多様性も確保できる。都会から人を雇用することで、雇用創出。山村も人口が増えて活気づき、経済波及効果もいろいろ生まれる。米は、加工米・酒米として使えばいいから、丈夫でその地にあった品種を育てる。食用ではないから酒造会社と直接販売などを開拓して利益を確保する。食物自給率アップにも貢献する。
農業は法律によって縛られている部分が結構あるから、簡単にはいかないかもしれないが、村=行政が介入することで公平性や持続性を確保できる。まずは特区などで先駆的に実践する自治体が現れないだろうか。

新聞報道に拠れば、同じ1億円の需要で、公共事業は1万弱の雇用創出を見込むのに対し、介護は2万5千人弱。福祉は1万9千人近く。医療も1万人超で、単純な公共事業より経済を活性化し、社会を下支えするものとなる。一方で、公共事業の経済波及効果は大きいというが、事業が終わればそこまでだ。医療や福祉には今後ずっと人手が必要で、雇用が維持継続されることからくる社会の安定性は、個人消費・国内需要を堅実なものとするだろう。最終的な経済効果はかなり大きいと思う。
農林水産業は6千人ちょっとと雇用創出は少ないとされているが、西粟倉村や棚田の復興といったような事業を展開すれば、もっと雇用創出数や経済波及効果は大きくなるだろう。

社会保障にしても、農林水産業にしても、今は赤字産業と思われている。しかしそれは違う。それが生み出す潜在能力はとてつもなく大きいのだと思う。
社会構造を変える。今求められているのは、20年30年先の社会が成り立つことを見通したシステム作りであるはずだ。何よりも、生きものに、人や動植物に人手をかけ、互いのつながりを見すえて持続していく社会をめざす。経済優先ではない社会、人が優先される社会をめざす。そこから新たな経済対策・公共事業のあり方を発想すべきではないか。

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